人生の壁となるのは、そう、階段!
- SAKAMOTO
- 10月27日
- 読了時間: 3分
狭小3階建て、理想と現実
週末の新聞に折り込まれる、光沢のある住宅チラシ。
「都心」「駅近」「夢の3LDK」…その魅力的な響きに、心ときめかせたことはありませんか? 私自身もまさにその賃貸物件に暮らす一人ですが、その経験から、専門家としてあえて申し上げたい。その美しい間取り図、本当に「暮らしやすい家」の設計図でしょうか?
土地の制約から、上へ上へと空間を求める都市の住まい。しかし、その結果として生まれる間取りには、日々の暮らしに静かに、しかし確実にストレスを蓄積させる「罠」が潜んでいることも少なくないのです。
罠その1:日常が「プチ登山」と化す家事動線
よく見かけるプラン。1階に洗濯機と浴室、2階にLDK、3階に寝室と物干しバルコニー。3階なんて太陽がさんさん輝き、冬でもあっという間に洗濯物が乾きそうです。 一見効率的に思えますが、これは毎日の洗濯が「濡れて重くなった洗濯物を持っての2フロア登山」になることを意味します。掃除機をかけるのもフロアをまたぐ一大イベントに。 これが何十年も続くのです。家事を担う方々の労力を、設計者は本当に想像したのでしょうか? ストレスを減らす方法としては、乾太くんを置く。または浴室乾燥機をつけて洗濯は一回で完結させる。マキタとかの小型で軽く、でも吸引は強力な掃除機を使うなどが良さそうです。

罠その2:「居室」という名の陽の当たらぬ聖域(サンクチュアリ)
「書斎やお子様の部屋に最適!」と謳われる3帖ほどの小部屋。 しかし、隣家が迫る1階の部屋は、建築基準法の採光基準を満たしていないであろう「なんちゃって居室」であることも。 結果、湿気と寒さで除湿機やエアコンが一年中フル稼働。住んでからのランニングコストが家計を圧迫する聖域と化しているご家庭も少なくなさそうです。

罠その3:人生の「壁」となる急勾配の階段
若いうちは気にならないかもしれませんが、狭小住宅の階段は、幅が狭く、勾配が急になりがちです。 ご自身が年齢を重ねた時、あるいは親御様と同居する時。怪我をした時、愛犬がシニアになった時…その一段一段が、過酷な「壁」として立ちはだかります。救急車の担架が入らない、大型家具の搬入はクレーン必須で追加費用…なんて、笑えない現実が待っているのです。

では、どうすれば? 後悔しないための攻略法
「暮らし」を間取り図に書き込んでみる 朝起きてから家を出るまで、洗濯、料理、掃除。ご自身のリアルな動きを、間取り図の上に赤ペンで書き込んでみましょう。驚くほど無駄な上下移動や、交錯する動線が可視化されるはずです。
「光と風」を現地で体感する 図面だけでは、本当の快適さはわかりません。時間帯や曜日を変えて何度も現地を訪れ、実際の陽の入り方、風の通り道、そして隣家とのリアルな距離感を肌で感じることが何よりも重要です。
「未来」の選択肢を設計に盛り込む 間取りが自由な注文住宅の場合、その家を「終の棲家」としてお考えなら、将来的なライフステージの変化まで見据える必要があります。例えば、約1畳のスペースで設置可能な家庭用ホームエレベーターも普及しており、その設置スペースをあらかじめ設計に盛り込んでおく、というのも一つの有効な選択肢です。この、ほんの少しの余白が将来の暮らしを大きく左右するでしょう。
まとめ 狭小3階建て住宅は、都市で豊かに暮らすための素晴らしい知恵です。大切なのは、セールストークや見栄えに惑わされず、その間取りが自分たちのライフスタイルと、これから変化していくライフステージに本当に合っているかを見極めること。
価格という数字だけで判断せず、その設計に込められた「暮らしへの配慮」を、じっくりと吟味したいものですね。

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